児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

虐待親への指導〜児相の判断基準〜

児相は、虐待を働いた親に指導をします。「子どもを叩くことで、子どもに良い影響を与えることはありませんよ。」「こうやって指導してください。」などなど、言い方はたくさんありますが、親が適切に子育てできるように助言するのです。明らかに受け入れが悪いときは何度か呼び出したり家庭訪問したりして指導します。

 

それ自体は必要なことですが、職員の経験を踏まえてはっきり言うと、児相が指導したところで、大人はそうそう変わりません。児相職員としての愚痴でもなんでもなく、行政としての権力を使って指導しても、「上から目線で何言ってくれてんの?」と反感を買うだけなのです。しかし、実際に養育を続けていくのは親。だから、児相は他の支援者がいるかどうか、行政機関や医療機関、学校など、見守ることができる人間を探します。

 

 

もちろん、考え方を変えて、環境を変えてくれる親も沢山います。しかし、親自身はなかなか変わらない。また子どもと衝突したり、親が再び虐待したりすることはあります。そのリスクを回避するために一時保護することも多々あります。悲しいかな、そこまでしないといけないケースは少なくないのが現状です。

 

 

 

 

 

児相職員としてしなければならないことは、一つしかありません。それは、親が虐待する原因は何か見極めることです。

そのために、子どもとも沢山話をします。親とも話をします。子どもの関係機関での様子も聞き取ります。そして、いろいろ総合して、どういう支援をするべきか考えなければいけません。

その支援の方向は、大きく分けて2つ。その子は親元で養育すべきか否か。それだけなのです。

昨今、虐待によって子どもの尊い命が失われる事件が多数報道されています。こういう悲しい事件を起こさないためにも、児相は何度も何度も検討して、子どもの処遇を決定します。それが、親にとって不満な答えでも、子どもにとって不都合なことでも、児相の決定は揺らぎません。

 

 

 

 

 

あなたが子どもを育てている親だとするならば、児相に子どもを一時保護される可能性がないとは言えません。それは、職員である私だって同じです。

もし、我が子が一時保護されたとき、自分に何も非がないと思ったならば、事実を誠実に伝えてください。そして、指導は甘んじて受けてください。

怒鳴り散らしたりする親の所には帰せません。過剰にことを荒げて児相を否定する親の所には帰せません。児相に「ヤバいやつ」と認定されると、児相は子どもを守ります。

 

 

もし、「児相が間違っている」と感じた時は、記録でも録音でもしてください。全ての職員がきちんと対応出来ているとは言えませんが、少なくとも私は「子どものことだけ」を考えて、真剣に対応しています。

 

そして、これは公務員特有の気質なんですが、市民に対して偉そうな態度を取る人も多いのです。公務員を代表して謝ります。すみません。

 

児相だって、好き好んで一時保護はしないはずです。保護件数でポイントが上がる、なんてこともありません。出来れば、一時保護はしたくない、というのが本音です。

一時保護は、子どもにも家庭にも大きなダメージを与えます。命を守るために、断腸の思いで一時保護に踏み切っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

いろいろぐちゃぐちゃ書きましたが、これだけは言わせてください。

子どもを変えたければ、親が変わってください。叩いたって、怒鳴りつけたって、絶対に子どもは思い通りに育ちません。

親がしっかりと自分の道を歩いて、その背中を子どもに見せてあげてください。そして、その姿が素晴らしければ、子どもはついてきます。

 

 

そう、自分に言い聞かせながら、私はこれからも生きていきたいと思います。