児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

進路を決めた話

高校1年生から施設に入り

生徒会はしていたものの

他の部活生よりは

随分とのんびり出来ていた

早めに帰宅し

18時には夕食を食べ

そのあと課題をこなし

テレビ見たり話したり

ゆったりした生活をしていた

 

 

 

洗濯物は自分でするが

家族全員分する必要がなく

食器洗いも当番制だが

基本2人組で行う

学校に持っていく弁当も

朝調理員の先生が作ってくれたおかずを

弁当箱に詰める

パンを選んで持っていく日もあった

勉強時間が確保され

自由時間もあった

勉強したいからと職員に話せば

消灯時間を遅くしてもらえた

土日にはグラウンドで遊んだり

部屋でギターを弾いたり

掃除は当番制だが

やるべきところをすれば良い

 


施設で生活する他の子にしたら

かなり縛られた生活だったろうが

私にとっては

自分の時間を作ることができる

素晴らしい環境だった

 


しかも

家で家事をしていたお陰で

施設での当番もソツなくこなせたため

職員からかなり褒められた

とても

とても居心地がよかった

私は

施設に帰ってから

笑顔でいることが多かった

ある小学生の男の子から

「ユウ君っていつもニコニコしとるよねー。なんでー?」

と言われたこともあった

理由もなにも

楽しいからに決まってるじゃないすか

 

 

 

平日の夕方

施設に帰ると

いつも、小学生が勉強していた

ちょうど、宿題をしている時間だった

「勉強、教えるの手伝ってくれん?」

職員から声をかけられた

当然、手伝った

勉強の教え方は、全然わからなかったが

一緒に問題に向かい

教えすぎてもいけないかと思い

横に座り、ヒントを出し続けた

宿題を終えた小学生の男の子が

「ユウ君、ありがとね!」

と言った

なんだか嬉しくなった

時間があれば勉強の手伝いをした

中高生で勉強が苦手なこともいたため

教えてあげたりもしていた

 


求められ、手助け、

そして感謝される

この"必要とされている感"が心地よかった

 

 

 

そんなこんなで

施設での生活を送っていた

 

 

 

高校2年の冬くらいだったか

進路について考える時期が来た

私はなんとなく文系にいたが

正直社会を知らなさすぎて

将来の夢など

特に考えつかなかった

 

 

 

 


いつものように勉強を教えようと

学習室へ行き

いつものように宿題の手伝いをしていた

 

 

 

ユウ君が先生やったら、学校楽しいと思う。

なんで?

だって、ユウ君、勉強教えるとき、おれが分からんくても、怒らんやん。

当たり前やん。頑張っとるってわかるけんね。

ユウ君、先生向いてそう。

そうなん?

ユウ君が先生やったら、絶対学校楽しいけん。絶対。

そうなんや。

 

 

 

小学生からこんなことを言われるとは

でも

たしかに

教える時間は楽しい

なにより

「向いてる」と言われたことは初めてだった

なるほど

私は先生に向いているのか

まあ

そういう道もアリかな

 



私は教育学部へ進学することを決め

個人面談で

教育学部を希望します。小学校の先生になろうかと思います。」

と担任に言った

「憧れの先生でもおるん?」

と聞かれたので

「ある人から、『向いている』と言われたので。」

と言った

 

 

 

こうして私は

高1の時になんとなく書いた

教育学部」への進学を

施設にいる小学生の所感をもとに

確定させた