児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

高校生活


学校へは今まで通り通った

 


幸い、自宅と施設の場所は近く

中学校区も隣同士だった

 


施設の職員には

最寄りのバス停から通うことを提案されたが

私は今まで通りのバス停に

歩いて通うことにした

 


私は、施設にいることを

学校の友人に隠すことにした

理由は単純で

「面倒くさいから」だ

 


施設に入ったとなれば

何かあったのか聞かれ

同情され慰められ

余計なコミュニケーションが増える

今までより10分長く歩くだけだ

それさえ我慢すれば

家のことを言わなければ

自分をさらけ出さなければ

安心だと思った

 


そもそも休みがちだったが

施設に入ったことにより

自分の時間が圧倒的に増えた

勉強にもかなり時間を割けるようになった

高1の終わり

私の学校では

文理選択なるものがあった

元々理系科目が得意だった私だが

文系へ進んだ

理由は

「面倒くさいから」だ

センター試験で数Ⅲ・Cは使わない

そもそも数学や理科を使った仕事に興味がない

センターで使わない勉強を

必死こいてすることが面倒で

文系に進んだ

進学希望の学部には

なんとなく「教育学部」と書いた

 


高2では

文系の普通クラスに入った

クラスには部活中心の友達が多く

宿題や授業をろくに聞かない人が多い

私は部活もしていなかったため

勉強に精を出した

友達によく宿題のノートを

見せてほしいと頼まれていた

そのためか

勉強は人一倍頑張った

 


私の県では

毎年、高総体の開会式が

陸上競技場で開催されていた

私は当然応援席にいた

 


何も変わりない1日だった

 


応援席から、担任に呼ばれた

そこには学年主任もいた

担任と学年主任に挟まれて座らされた

そこで学年主任が切り出した

 


「生徒会選挙に出てくれないか」

 

 

 

は?

今なんと?

 

 

 

なんでも

今回出馬している副会長候補が1人しかおらず

少し心配な生徒であるとのこと

先生たちとしたら

生徒会はかなり重要で

しっかり仕事をしてくれる人がよいと

日頃授業を頑張っていて

でも、部活をしていない

うちの高校は文武両道を掲げている

生徒会を背負ってくれる存在は

お前しかいないと熱弁した

 


先生方から

「お前に頼みたい。お前だから頼みたい。」

と言われ、素直に嬉しかった

では

生徒会選挙には出ます

しかし

落ちても文句とか言わないでくださいよ

そう話して

私は生徒会選挙に出馬した

 


生徒会選挙のスピーチはグダグダ

応援演説の友達のスピーチの方が立派だった

私なりに頑張って話をした

もう1人の候補者のスピーチは

面白い話で、とてもウケていた

 


結果

私は僅差で勝利し

生徒会副会長になった

それなりに仕事をした

勉強も頑張った

 

 

 

高3になり

成績が爆上がりした私は

特進クラスに入った

周りは勉強を常に頑張っている

それなりに気合が入った

 


そして

大学が決まり

卒業式を迎えた

 


卒業式後

クラスで一人一人思いを

スピーチする時間があった

そこで私はカミングアウトした

 


「僕は、高1の秋から児童養護施設にいました。ここにいるみんなと違う生活をしていましたが、みんなの頑張りについていこうと必死でした。お陰で、僕は進学先がきまりました。本当にお世話になりました。」

 


卒業式後、担当職員に

「お前、言ってよかったんか?」

と言われた

よかったんだ

だって

最後のあいさつだもの

それに

信頼できる友達には

すでに言っているもの

 

 

 

 


正直

高校生活は

満足できるほど楽しいものでもなかった

でも

それなりに努力できたし

何より

進学できた

 

 

 

よかった

 

 

 

ありがとう

北高