児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

いざ、児童養護施設へ

児童養護施設って、一体何なのか

全くわからなかった

 


聞いたのは、

寮みたいなものだと

新しい友達ができるのだろう

 


引っ越しをしたことは

ぼんやりとしか覚えていない

よくわからない人が来て

児童相談所なるところに連れていかれ

何やら待たされて

施設へ連れていかれた

いく意味があるのか

よくわからなかった

 


施設に着いた

古い住宅街から一本入った狭い道

そこにポツンとある建物だった

その中に入ると

施設の職員が出てきた

よくわからない説明を受け

部屋に連れていかれた

妹は女子棟へ

私と弟は男子棟の同じ部屋へ

私たちの部屋には

すでに2人の児童が住んでいた

当時私が高1、弟が中2

同居の男子が高2と中2とのこと

4人部屋だ

来た時間が昼間だったこともあり

他にどんな人が

この施設に住んでいるのかわからなかった

 


ぼちぼち子どもが集まりだした頃

食堂で紹介があった

自己紹介をしてほしいと言われたので

学校で昔教わったスピーチを思い出し

大きな声で挨拶した

みんなが拍手をした

なんだか迎えられている気がした

これからここで生活するのか

楽しみだ

 


同じ部屋の友達と話をした

好きな食べ物は?

好きな音楽は?

好きなスポーツは?

どこの学校に行ってるの?

 


私はてっきり

「なんでここに来たの?」と

聞かれるものだと思った

そんなこと聞かない2人

 


よくよく考えれば

ここにいる友達も

私たちと同じ

「家で生活できない子」だ

お互いに聞かれたくないことが

たくさんあるだろう

 


そこで思い出した

最初に指導員から

「自分の家庭の事情は話さないように」

と言われたことを

 


長い1日だった

 


いつも見上げていた

薄汚れた蛍光灯がぶら下がった天井はない

何ヶ月も干していない煎餅布団もない

綺麗に洗濯されたシーツのかかった

ロフトベッドに寝転がり

カーテンを閉め

ひとりの空間になった

 


この日の夜は

不思議とすんなり眠りにつけた

いろんな人と会い

疲れたのかもしれない

 


さあ

新しい生活の始まりだ