児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

学園祭の話②

 

 


私は大学で

軽音楽のサークルに所属していた

つまり、バンドをしていた

私はギターボーカルを中心に

活動をしていた

 


学園祭では

サークルでいくつかのバンドが

中庭のステージに立つことができた

 


ステージバンドは

4年生の先輩が推すバンドが

出演することになっている

3年生以下は

先輩のバンドのメンバーに入っていれば

ステージに立てるということだ

 


私は3年生の時に

ギタボで出演した

かなり嬉しかったが

私の演奏は下手くそで

先輩方に申し訳ないくらい

見苦しかったと思う

かなり悔しかった

 

 

 

4年生では

ステージを成功させるために

練習を頑張り

パフォーマンスを考えた

最後の学祭

2つのバンドで出た

1つは午前中

もう一つは夕方だった

周りの友達に

「見に来てね」「頑張るけん」

と宣伝した

 

 

 

 


私はステージに上がり

とても楽しく演奏した

 

 

 

ステージの上から見下ろす風景は

格別だった

行き交う人の流れを眺めながら

私たちの音を空中にばら撒く

通り過ぎる人もいれば

私たちメンバーの演奏を応援してくれる人も

写真を撮る人もいれば

飲み食いしながら聞く人も

 


当たり前に流れるであろう人の往来に

少なからず影響を与えていることに

私は快感を覚えた

私が一つの存在として

社会から認められている気がした

 

 

 

その昔

私ひとりの力では

どうすることもできなかったものがある

たった数人の家族も

救えなかった

でも

ここでは

私が頑張ったこと

皆に楽しんでもらうこと

それを音楽という形で投げ返す

求めてくれる人がいる

 

 

 

2つ目のバンドの最後の曲の時

ステージに向かって

茜色の強い光が

私たちを照らした

ただの夕陽が

スポットライトのように感じた

 


この魂が尽きるまで

レール曲げるくらいの覚悟だぜ

朝靄の奥に見えるだろう

丸くて大きな

あの もはや無敵の太陽が

(手をたたけ/Nico Touches the Walls)

 


歌の歌詞と

高揚した私の気持ちが

絶妙に混ざり合い

脳内に麻薬のような刺激を感じた

 

 

 

ああ

気持ちいい

またここに立ちたい

 


私は

人の前に立ち

誰かに影響を与えることができる

そんな存在になりたいと

心から思った

 

 

 

ステージを降り

私は今までの場所に戻った

ステージにはまた別の学生が

つい数分前の私のように

パフォーマンスをしている

 


人の流れを見ていた私は

あっという間に

学祭の賑わいを作り出すだけの存在に

成り下がった

でも

特に不満に思うことはなかった

 

 

 

 


ステージに立ち

快楽を感じるためには

観衆が必要だ

見る人がいなければ

ステージは成り立たない

私がこうして

観衆と一部になる時間があるからこそ

私がステージで輝ける

 

 

 

 


私は

他の出演者の演奏を

一生懸命応援した

 


その後

テントでホットドックを売っているとき

「ステージ、見たよ!カッコ良かったよ!」

「歌、上手ですね!」

お世辞か本音かはわからなかったが

反響があってとても嬉しかった

 

 

 

 


楽しかった思い出は

思い出のまま

またまた新しいステージが

私を待っていると信じて

学園祭を終えた