児童養護施設から自立した話

児童養護施設出身の筆者が綴る大したことのない日常の話

巣立ちの話


高校卒業に向けて

着実に進んでいった

 


私のいた児童養護施設から

国立大学へ進学することは稀で

私と一緒に社会に出る子は

皆就職だった

 


事務の先生は

返還不要の奨学金

たくさん探してくれた

お陰でたくさんの準備金ができた

施設の他の子たちや指導員の先生たちから

メッセージカードをもらった

 


施設の職員から

「巣立ちのための60のヒント」という

冊子をもらった

これから始まる生活について

詳しく書いてあって

とても参考になった

 


大きなワンボックスカーに

私の荷物を詰めて

最後のあいさつをした


天気はとても良かった

たくさんの人に見送られた

玄関を出て見上げて

私が生活した施設を眺めた

 


ここで生活し

少しずつ自分を取り戻し

まだまだ未熟な私を

育ててくれた

いい経験じゃなかったかもしれない

普通の生活ではなかったかもしれない

それでも

ここから巣立つことを

誇らしく思った

弟妹はまだここで生活する

手本になるようにしっかりせねば

でも

それは父の代わりとしてではなく

この施設から卒業した子として

さあ

頑張らなければ

 

 

 

車に乗り込み

施設を後にする

高速道路に乗り

見慣れない景色の中を

進んでいく

 


私は窓の外の景色を眺めながら

これから始まる新しい生活に

期待で胸がいっぱいだった

 

 

 

 


大学の学生寮に到着した

そこで母と伯母と合流した

荷物を運び込み

先輩方や同級生と話をした

私が学生寮に入ったのは

引っ越し期間の初日だった

あと2日で

もっとたくさんの同級生が

引っ越してくるという

 

 

 

私は

中学時代から仲の良い

友達がいた

その友達は父親の仕事の都合で

高校から福岡にいた

私が1人でもがいている時も

連絡を取ったりしていた

その友達から連絡があり

引っ越しの次の日に遊びにいった

JRを乗り継いでいったが

なかなか遠かった

やっとこさついた街で

一緒にいろんな話をした

私が身内の話をする数少ない友達だ

とても楽しかった

その日、大学デビューということで

友達の家で髪を染めた

赤茶色の毛染めを買い

ギャーギャー言いながら

私は髪を染めた

染めた直後は

あまり変化がなく

つまらなかった

しかし

寮に帰り風呂に入り、次の日には

かなり色が明るくなった

違う自分になったようで

嬉しかった

 

 

 

入学式は

スーツを着ていった

そのスーツは担当職員と一緒に

買いに行ったものだが

私がスーツに無頓着で

どの種類がいいとか

形がこんなものがいいとかがなく

勧められたものを適当に選んだものだった

その時、担当から

「ちゃんと選べ。」と

注意された気がする

思い入れはないスーツだったが

なんだか大人に近づいた気がして

とても嬉しかった

 

 

 

私は大学生だと

実感が湧いてきた

 

 

 

入学式で

推薦入試で同じグループだった

あの友達と会った

心強かった

一緒に昼食を食べた

サークルや部活の勧誘があった

時間割を決めたりした

新しい出会いがたくさんあった

 

 

 

 


私はその日

 


やっと

 


やっと

 


普通の人たちと

同じステージに立ったのだと

実感した

 

 

 

ここからは自分次第だ

 

 

 

そう感じた